人材紹介・人材派遣の仕組みを正しく理解していますか?
- C3
- 5月12日
- 読了時間: 4分

よくある相談:転職エージェントに感じたズレ
人材紹介会社に登録して、こんな違和感を覚えたことはありませんか?
キャリアチェンジを希望しているのに、過去の職歴と同じような求人ばかり紹介される
内定を辞退したら、担当者の態度が急変した
希望とまったく違う求人ばかり案内される
「前職では辛い思いをされたかもしれませんが、○○社は違いますよ」と説得される
「○○さんのスキルなら、年収上がりますよ。もったいないですよ」とやたら強引に勧められる
登録後、一度「紹介できる求人はありません」と言われて、そのまま連絡が来なくなった
こうした体験の背景には、人材紹介や派遣の「仕組み」への理解不足があるかもしれません。
人材紹介のビジネスモデル
労働基準法 第6条では、「中間搾取の排除」が明記されており、求職者から手数料を取ることが禁止されています。そのため、人材紹介会社は「求職者が入社した企業」から手数料を受け取ります。
この紹介手数料は、業界や職種によって異なりますが、おおよそ年収の25〜40%、一般的には30%ほどが相場です。
たとえば、年収400万円の求人に紹介して入社が決まると、紹介会社の売上は約120万円になります。
つまり、人材紹介会社にとっての「お客様」は求職者ではなく、求人企業なのです。
人材紹介会社の「現実」と契約構造
さらに、ほとんどの紹介契約では次のような取り決めがあります。
入社後3か月以内に、労働者の責任によって退職があった場合は、手数料の一部を返金する
会社によって違いますがおおよそ
1か月以内の退職:手数料100%返金
2か月以内の退職:手数料70%返金
3か月以内の退職:手数料50%返金
これを知っておくと、人材紹介会社のホームページに書かれている次のような言葉が、少し違って見えてくるかもしれません。
「キャリアコンサルタントが強みや適性を見極め、キャリアプランをご提案」
「求職者の希望に最大限寄り添った求人をご紹介」
「入社後のフォローも万全」
実際には
紹介しても企業が採用しなければ売上にならない
早期退職されると紹介手数料の返金が発生する
紹介した人材の質が問われる
企業との信頼関係が損なわれる
他の紹介会社に切り替えられる
こうした企業側の事情が優先されるのが、現実の構造です。
なかには悪質な事例も
すべての人材紹介会社が悪いわけではありません。ただし、紹介手数料が高額であるがゆえに、求職者や企業をだましてでも契約を取りに行く会社があるのも事実です。
以下は、私自身が実際に求職者・紹介会社の社員・求人を出している企業から得た一例です(企業名が特定できないよう加工しています)
東京都の会社:求人件数は500件ほどしかないのに、ホームページには「1万件以上の求人」と記載
東京都の会社:すでに募集終了している求人を、クレームが入るまで掲載し続ける(説明は「事務処理の遅れ」)
兵庫県の会社:求職者を惹きつけるため、求人票の応募条件に「映画が好きな人」など独自に記載
広島県の会社:相談者の事務経験を「営業事務経験あり」に修正するよう求め、営業事務職への応募を強く勧める
派遣の場合も本質は同じ
人材派遣については、労働者派遣法の関係で紹介手数料や雇用の形が異なりますが、構造的に見れば「顧客は企業」「求職者は商品」という関係性に変わりはありません。
エージェントは「使う側」の意識を持ち、信頼と同時に見極める目を
人材紹介会社は多くの転職者を支え、企業と人材を結びつけるという点で、社会にとって欠かせない重要な存在でもあります。
ただし、あくまで求職者は「企業にとって売れる人材」としての商品であること、そして自社の利益のため、自己の成績のために平気で嘘をつく会社やキャリアコンサルタントが存在するということを、求職者は理解しておく必要があります。
転職やキャリアチェンジにおいて、エージェントを賢く活用することは、大きな助けになります。
自分一人では得られない企業情報や採用の裏事情を提供し、企業との橋渡しをしてくれる存在として、心強いパートナーにもなり得ます。
ただし、その仕組みや立場を理解したうえで、「自分のために動いてくれる存在」だと過信せず、主体的に判断する目と、必要なときには「断る勇気」も持つことが何より大切です。
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